|
|
|
|
 |
| 法律相談のいくつかの事例をご紹介します。 |
 |
Q1 不動産売買について何か特別な規制はありますか?
Q2 「手付」とはどういうものですか?
Q3 土地を売りましたが、買い主が代金を支払ってくれません。どうすれば払ってもらえるでしょうか?
Q4 土地を買いましたが、売り主が登記手続に協力してくれません。どうすればよいでしょうか?
Q5 引っ越してアパートを出るときに入居の時に払った「敷金」は返してもらえるのでしょうか?大家さんは、修繕やクリーニングにかかる費用は借りていた私が負担しなければならないから、敷金は残らないかも知れないと言っているのですが…
Q6 賃借名義人である夫が死亡した場合、家主から立ち退きを要求されたら妻は立ち退かなければいけないのですか?また、戸籍上の届をしていない内縁の夫婦であった場合はどうですか?
Q7 「筆界特定制度」とはどんなものですか?
Q8 私の家は商店街にあって、隣地との境界線ぎりぎりに建てられています。改修工事を行ないたいのですが、工事をするために隣地の一部を便用する必要があるのに承諾が得られません。どうすればよいでしょうか。 |
|
|
 |
不動産売買について何か特別な規制はありますか? |
 |
土地・建物のことを不動産といいます。不動産の売買には、特別な規制がなされ注意すべき例がいくつかあります。例えば、次のようなものです。
(1)農地の売買の場合、農地法3条により、農地の売買その他の取引に都道府県知事の許可が必要とされています。許可を受けないでした行為は効力を生じない(農地法3条4項、5条)ので、売買の対象が農地の場合は注意が必要です。
(2)国土利用計画法に定められた規制区域(国土利用計画法12条)内の土地の売買には都道府県知事の許可が必要であり、許可を受けないで締結した契約は効力を生じず(同法14条)、無効です。また一定の区域内の一定の条件にある土地については、都道府県知事に対する届出義務が定められています(同法23条)。届出義務に違反すると6月以下の懲役または200万円以下の罰金という罰則があるので(同法47条)、注意が必要です。
(3)宅地建物取引業者がみずから売り主となって締結する土地・建物の売買契約については、宅地建物取引業法(宅建業法)が適用され、書面の交付義務、クーリング・オフの権利、損害賠償額の予定の制限、手付の額の制限などが規定されています(宅建業法37条以下)。
不動産を売買する際には、価格や立地条件だけでなく、その土地に何か法律上の規制がないかなども気を配っておきましょう。
|
|
|
|
 |
「手付」とはどういうものですか? |
 |
不動産の売買や賃貸借などでは、「手付」と呼ばれる金銭が授受されることがよくあります。手付には、(1)解約手付、(2)損害賠償の予定としての手付、(3)違約罰としての手付などいくつかの種類がありますが、民法557条1項は、手付を解約手付の性質を有するものと規定しています。
(1)手付が解約手付の場合、例えば、1億円の土地の売買で、買い主が1,000万円の手付を支払ったとすると、一方当事者が履行に着手するまでは、買い主は手付金を放棄して契約を解除でき(手付損)売り主は手付金の倍額である2,000万円を提供して解除できます(手付倍戻し)。
(2)損害賠償の予定としての手付は、債務不履行があった場合の損害賠償額をあらかじめ定めておくものです。
(3)違約罰としての手付は、債務不履行があった場合に、本来の損害賠償とは別に没収できるものです。
手付を解約手付とする民法557条1項は任意規定なので、当事者の合意があれば手付を解約手付の性質をもたない違約金とすることもできます。その場合、手付を放棄または倍戻しすることで契約を一方的に解除するということはできません。
もっとも、不動産のプロである宅地建物取引業者(宅建業者)が自ら売り主となる宅地・建物の売買契約に関しては、宅地建物取引業法39条が、宅建業者は代金額の2割を超える手付を受領できないとし、かつ手付は全て解約手付とみなしています。つまり、宅建業者から土地・建物を買う場合には、買い主は手付金を放棄すれば売買契約を解除できます。
これは、買い主保護のための規定で消費者保護のためにとくに契約の拘束力を弱めたものです。
|
|
|
|
 |
土地を売りましたが、買い主が代金を支払ってくれません。どうすれば払ってもらえるでしょうか? |
 |
裁判をせずに代金支払を求める場合、内容証明郵便(配達証明付き)で期限を定めて督促するのが効果的です。電話や普通の手紙で請求してもかまいませんが、内容証明郵便を利用しておけば裁判になった場合の証拠が残り便利です。もっとも、何らかの理由で遅れているにしても売り主が払うつもりでいるところにいきなり内容証明が送られてくるのは不愉快なものですから、まずは電話等で買い主に理由を問い合わせてみた方がよいでしょう。
もちろん、売り主は代金の支払がなされるまで、土地の引渡や登記名義の移転を拒むことができます。これを「同時履行の抗弁権」といいます(民法533条)。
買い主が正当な理由がないのに売買代金を支払わない場合には、民事裁判を起こしてその代金の支払を請求して、支払うように求めます。裁判を起こすことで支払を怠っていた買い主があわてて代金を支払うこともあります。また、裁判手続の中で和解をして支払に応じてくることもあります。それでも払おうとしないのであれば、裁判で代金の支払を命じた「判決」や、裁判手続を和解で終了させる際に作られた和解調書等を「債務名義」(強制執行で差押え等をする権限があることを示す文書のこと)として裁判所の「強制執行」手続を利用して、買い主の財産を差し押さえるなどして代金相当額の支払いを受けることができます。
|
|
|
|
 |
土地を買いましたが、売り主が登記手続に協力してくれません。どうすればよいでしょうか? |
 |
土地等の不動産売買契約が締結された場合、売り主は代金受領と引き替えに不動産の所有権を移転する義務(登記移転義務、明け渡し義務など)を負うことになります。
登記名義の移転がなされなければ買い主は所有権を取得したこと(土地や建物が自分のものであること)を第三者(例えば売買後に土地を差し押さえようとした債権者や、二重売買をされた別の買い主)に対抗できません(民法177条)。そして、登記は、売り主と買い主が共同で申請するのが原則なので売り主には買い主への所有権移転登記手続に協力する義務があります。
売り主が任意の登記移転手続に協力しない場合、買い主は、裁判所に代金支払と引き替えに所有権移転登記手続を行うよう請求する訴訟を提起することができます。そして、裁判で勝訴すれば、売り主が登記の移転に同意したものとみなされ(「意思表示の擬制」といいます。)、買い主は、裁判所でもらった判決書を登記申請書に添付して、法務局(登記所)で所有権移転登記手続の申請を単独ですることができます。
|
|
|
|
 |
引っ越してアパートを出るときに入居の時に払った「敷金」は返してもらえるのでしょうか?大家さんは、修繕やクリーニングにかかる費用は借りていた私が負担しなければならないから、敷金は残らないかも知れないと言っているのですが…
|
 |
アパートなどを借りるときに支払う「敷金」は、例えば家賃に滞納があったり、賃借人が建物の一部を壊すなどして家主に損害賠償をしなければならないなどの場合に、家主が敷金として預かった金銭でこれにあてるためのものです。
家主は、賃貸借契約が終了して、賃借人が建物を明け渡した場合には、滞納家賃などを敷金から差し引いて賃借人に返還しなければなりません。もし差し引かれるような費用がないということであれば、入居時に支払った敷金は建物を明け渡した後全額返してもらうことができます。
さて、それでは、修繕費用を敷金から差し引かれることはあるでしょうか。まず、敷金が担保するのは、賃貸借契約を締結してから賃借人が建物を明け渡すまでに生じた、賃借人が賃貸人に対して負う一切の債務ですから、修繕費用が賃借人の負担となるものであれば敷金から差し引かれるということになります。
賃借人には、借りていた物(例えばアパートの部屋)を原状に戻して返還する義務がありますが、長い期間住めば部屋がある程度傷んでくるのは当たり前ですから、普通に使っていて生じる程度の汚損があったとしても、部屋を返せば返還義務は完了したということができます。
一方、常識の範囲を超えた著しい汚損があった場合には、そのまま返しただけでは返還義務を履行したとはいえず、著しい汚損にかかった修繕費等が敷金から差し引かれても仕方がないといえます。
ただ、そのような場合ではなく、家主が新しい賃借人に貸すために新築同然の状態にリフォームするなどする費用を賃借人に負担させることは許されず、そのようなリフォーム代が敷金から差し引かれることはありません。ですから、あなたが普通の使い方をしてアパートに住んでいたのなら、敷金は返ってきます。
|
|
|
|
 |
賃借名義人である夫が死亡した場合、家主から立ち退きを要求されたら妻は立ち退かなければいけないのですか?また、戸籍上の届をしていない内縁の夫婦であった場合はどうですか? |
 |
借家人が死亡した場合、借家権も財産権として相続の対象となります。そして妻は夫の相続人となるので、他の共同相続人(子供など)がいる場合には他の共同相続人との共有して、妻だけが夫の相続人である場合には単独で借家権を相続することになります。
妻が夫の借家権を相続した場合、家主は相続で借家権を引き継ぐことを拒否することができませんから、家主から立ち退きを要求されても拒否することができます。
ただし、相続の場合は、それまでの借家関係がそのまま引き継がれるだけですから、契約期間の途中で夫が死亡したような場合には、賃借期間は残りの期間だけ(もちろん、更新はできる。)ということになりますし、それまでに家賃の滞納などがあれば滞納家賃を支払わなければなりません。
仮に家主が相続を理由に「名義を書き換える」という名目で名義書換料や新たな敷金要求したり、代替わりを理由に家賃の値上げを要求してきたとしても、借家権の相続というものは、あくまでもそれまでの契約関係がそのまま相続人に移ることなので、家主のこのような要求に応ずる義務はありません。
それでは、妻が戸籍上の届を出していない「内縁の妻」である場合はどうでしょうか。実態が夫婦であっても、戸籍上の夫婦でない内縁の妻には、内縁の夫の相続人となることができません。
内縁の夫に相続人がいない場合には、内縁の妻は借地権の承継について定めた借地借家法36条により内縁の夫の借地権を承継して、借地権に関しては相続人と同様の地位が認められます。
しかし、内縁の夫に相続人がいる場合には、借地借家法36条は適用されず、借家権は原則通り相続人に引き継がれ、内縁の妻は借家権を承継することができません。
判例は、このような場合に、内縁の妻が相続人の借家権を援用して居住の利益を主張することを認めています(最判昭和42年2月21日民集21巻1号155頁)。つまり、内縁の妻は内縁夫の借家権を引き継ぐことはできませんが、内縁夫の相続人が引き継いだ借家権を家主に対して主張して居住することができるということです。しかし、相続や借地借家法36条により借家権の承継の場合と違って自分が借家権を持つわけではないので、立場としては弱く、住み続けるには相続人にお願いせざるを得ないでしょう。
|
|
|
|
 |
「筆界特定制度」とはどんなものですか? |
 |
土地の境界紛争が起こった場合、従来は、裁判所による境界確定訴訟によらなければ公的な境界を確定できませんでした。しかし、平成17年の不動産登記法改正により、新しく登記所の登記官によって境界(筆界)を特定してもらう「筆界特定制度」ができました。「筆界特定」とは、1筆の土地およびこれに隣接する他の土地について、筆界の現地における位置を特定することであると定義されています(不動産登記法123条2号)。
土地の所有権登記名義人等は、対象土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局で筆界特定登記官に、当該土地とこれに隣接する他の土地との筆界特定について申請することができます。
そして、専門的な知識をもった筆界調査委員が、筆界特定のために必要な調査をしたうえで、筆界特定登記官が「筆界特定書」を作成し筆界を特定します。
筆界特定は、あくまでも筆界特定登記官の認定判断であって、法的な効力をもって筆界を確定するものではありません。境界紛争の際に従来から行われていた、裁判所での「境界確定訴訟」の判決が出ると、境界画定訴訟が優越することになります。筆界確定がされた場合に境界確定訴訟の判決が確定すると、当該筆界特定は、当該判決と抵触する範囲において、その効力を失います(不動産登記法148条)。また、既に境界確定訴訟による判決(訴え却下の場合を除く)が確定しているときは、筆界特定の申請は却下されます(不動産登記法132条1項6号)。
裁判所は、筆界特定がなされていない場合に、境界確定訴訟が提起されたときは、その訴訟内において、訴訟関係を明瞭にするために、登記官に対し、筆界特定手続記録の送付を嘱託することができます。境界確定訴訟が提起された後に筆界特定がされた場合も同様です。
筆界特定は公的な境界線を特定する手続なので、所有権の範囲の争いとは別問題(この点は境界確定訴訟も同じ)です。ただ境界線を境に所有権の範囲が決まると双方とも考えている場合にはそれなりに役立つでしょう。
|
|
|
|
 |
私の家は商店街にあって、隣地との境界線ぎりぎりに建てられています。改修工事を行ないたいのですが、工事をするために隣地の一部を便用する必要があるのに承諾が得られません。どうすればよいでしょうか。 |
 |
土地の境界の近くに建物を建築したり、改修工事をするような場合に、隣地が全然使用できないと、工事が不可能であるとか、大変不便であるということがあります。
そのような場合、民法209条1項は必要な範囲で一時的な隣地を使用することを隣人に請求することができると定めています。
ただし、そのために隣人が損害を被る場合は償金を支払わなければならないとされています(同条2項)。
では具体的にどのような手順で使用の請求をするかということですが、まず隣地の所有者などに対して、事前に書面などで使用請求の通知をします。
隣地の使用は建物の建築・改修工事などのために「必要な範囲」とされていますから、双方の事情(工事の規模・緊急性・隣地の使用状況・隣地の受ける損害の程度・他にとるべき方法がないかなど)を斟酌して決めることになっていますから、この通知には、使用の目的を示し、そのために必要な使用範囲や使用期間などを明らかにする必要があるでしょう。
では、隣地使用を請求したのに、隣地所有者が承諾をしてくれない場合にどのようにしたらいいかということですが、このような場合、使用請求の通知をしただけで当然に使用できる権利が発生するという考え方もありますが、通常は相手方の承諾が必要であると考えられています。
従って、相手方が使用を承諾しない場合は、承諾を求める訴訟を裁判所に提起し、その勝訴の判決を得て隣地の使用をすることになるでしょう。
しかし、訴訟の結果を待っていては間に合わないというような、緊急性があるような場合には、裁判所の仮処分命令を得て隣地を使用するという方法も考えられます。
この場合には隣地所有者の受ける損害を担保するために裁判所の決めた保証金を供託することになると思います。
|
|
|
|